河童の乱反射
中森そら
あらすじ & 講評
最近オレは友達付きあいも減らして、ずっと彼女(?)のことばっかりを考えている。そう、河童の「樹絵留」のことを――。
まったくかわいくない河童、謎のふんどし、細かいギャグや顔芸など、突っ込みを入れる部分と抜く部分の緩急が巧みなので破綻せずテンポよく進んでいる。ただ、演出がやや古く背景の粗さが目立つのが欠点。シュールなネタは強みだが、連載に向けて「このキャラが好き!」「このキャラの続きをもっと読みたい!」となるようなキャラクター作りに期待している。


playview
宇飛任 / ヨッシー
あらすじ & 講評
主人公の武藤芽衣は現実の異性に魅力を感じず、もっぱらオンラインゲームで運命の相手を探し求めていた。いつものようにゲームの世界に入りこみ冒険に出ると、一人の少年と出会って……。
芽衣のキャラクターデザインや、漫画内の彼女の表情がどれも魅力的に描けている。背景の描写も含めて全体の作画力はとても高く感じるが、芽衣と少年とのエピソードが浅く物語の内容に感情移入しにくいため、節々の細かい心情変化をしっかり描けるとさらに良い作品になるだろう。


初ちゃんは伝えたい
加藤文孝
あらすじ & 講評
幼なじみの初と李乃。初は物事を人に説明するのが下手で、伝えたいことがあふれすぎて多言になる癖がある。李乃はいつもそんな彼女の意図を酌むよう努力するのだが…。
前回応募よりも、キャラクターのデッサン・背景の描きこみ共にブラッシュアップできている。また二人の掛け合いに絞ったコメディ展開は小気味よく、多言癖のある初のキャラクターは引き立っている。展開としてもう少し広がりが出せればよりよい作品になってゆくだろう。


面と向かって言ってくれ!
滝野まえ
あらすじ & 講評
突然「好き」という声がテレパシーで聞こえるようになった男子と、奥手ながらも真っすぐな気持ちを持つ女子のお話。女の子が気持ちを伝えるまでのワンテーマで物語が進むが、ピュアなふたりをしっかりと描ききったことが印象的だった。話のテンポもよく、読者を話に引きこむ力が感じられた。今後はより大きく読者を驚かせるような話づくりや、背景を含めた絵の全体的な熟達に期待したい。


NO FUTURE NO CRY
コヨッセイ
あらすじ & 講評
年中金欠のJK・ハルカは変わった懐中時計を拾う。時計の針を巻き戻すと、どうやら時間も戻っていくようで……。
設定が複雑なため、見せかたに工夫が必要。回想シーンの導入や時計で巻き戻る演出などはもっとわかりやすく表現できたはず。また、主に男性キャラのタッチがやや古い。悪いことではないが、この絵柄を活かした作品を作ることが肝要。より読みやすさに焦点を当てた次回作に期待。人間ドラマは◎


きの子の憂鬱
田上愛
あらすじ & 講評
毒キノコであるベニテングタケの妖精・ベニちゃんは、赤くてかわいいベニテングタケが人間に食べてもらえなくて寂しい思いをしていた。おいしい茶色に見えるように妖精仲間の力を借りて泥を塗ってはみたものの…なんだか地味な感じ。そんな折、ひとりの人間の女の子が拾ってくれて――?
毒キノコという着眼点と、ベニちゃんの愛らしい反応が魅力の本作。ストーリーの組み立てかたがとても上手だった。一方、全体的に線が洗練されておらず、画力があともう一歩。キャラクターの表情も古めだった。流行の絵柄を研究しつつ、体の描きかた・トーンの処理など、絵の基礎を丁寧に練習してレベルアップしてほしい。


透明な花束
日之輝ラヴ
あらすじ & 講評
画面が華やかで、楽しませようという気持ちが伝わってくるのが◎。女子キャラが可愛いが、男子キャラの魅力は今一歩。都合のよい展開と演出・そしてモノローグで話が進んでいる点が若干低学年女子向けの作風になっている。そこを気を付けながら、今後プロデビューを目指してもらいたい。


恋ちゃんは
ラブコールに無関心?
Cuuw
あらすじ & 講評
小学5年生の恋ちゃんはとてもクールな女の子。最近の悩みは、親戚のお姉さん二人からの熱烈なラブコール…。愛が重い二人に振り回される年の差百合コメディ。
グイグイくるお姉さんたちと、クールながらも可愛さが隠せない女の子が◎。ただ、キャラクターの可愛さに寄せすぎていて、他のところとの絵のメリハリをもっとつけてほしかった。絵柄のムラを無くして画力をより高めることで、全体の質を向上してほしい。


偽りのない行為
ネコザメ。

Evil law~
「友達禁止令」は悪法か?
青葉まき

ちっ'とも'
kazki
ジーン編集長
池上昌平
受賞者の皆さん、おめでとうございます。
今回も残念ながら大賞は選出できませんでしたが、受賞作のそれぞれは個性あふれる意欲的な作品ばかりでした。
フラッパー賞を受賞した「河童の乱反射」、とても楽しませていただきました。河童がかわいくないとか、シュールすぎるとか、河童が本当にかわいくないとか、読んだ編集者たちからは様々な感想がありましたが、そうした読者のリアクションも、作者によって計算されていたものだと感じます。結局みなこのマンガを楽しんだのです。これを描いた中森そらさんの、ほかの作品も読んでみたくなりました。
ステップアップ賞となった「オンラインゲーム」「初ちゃんは伝えたい」「面と向かって言ってくれ!」も、応募部門によって作品のテイストはそれぞれですが、やはり読者をどうやって面白がらせるかということを意識できていました。ちゃんと狙いがある作品でした。
MFコミック大賞は、おもに投稿作自体を審査・評価させていただいていますが、作品にあらわれる作家性も、おのずと評価の対象になります。読んだ人にこんな感想をいだかせてやろう、こんな気持ちにさせてやろう、というたくらみがある作者は、たまたま今回の応募作が面白かっただけでなく、おそらく次回作も面白いだろうな、と思わせます。
部門賞・ステップアップ賞受賞の4人の方は、誌面で次回作にお目にかかることを楽しみにしております。
期待賞・努力賞受賞の皆さんも、作家性ふくめ評価させていただきました。次回作ではさらに大きな評価を獲得できるはずです、次なるチャレンジをお待ちしております。
そして、まだチャレンジをしていない漫画家志望のみなさん。原稿を描くのは大変なことですし、投稿するのは不安でためらってしまうものです。だから編集部では、みなさんの労力と勇気に、真剣に審査することでこたえます。みなさんが活躍できる場を用意しております。
第24回MFコミック大賞で待ってます!