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『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 23』
理不尽な孫の手先生書き下ろしこぼれ話
二十三巻発売でございます。
もう、完結までの巻数も片手で数えるほどとなってまいりました。
ここまで出させていただいたのは、皆様のお陰です。本当にありがとうございます。
さて、二十三巻は今までに無いほど書き下ろしの量が増えております。
ルーデウスが三人の嫁と一緒に天大陸を旅する話や、エリスと一緒に紛争地帯に赴き、ちょっとした感慨深い場所にたどり着いたりします。
ちょっと駆け足な内容になってしまったかもしれませんが、お楽しみいただければ幸いです。
今回のこぼれ話では、もし転移事件が起きなかったら、というIFの話をつらつらと書いていこうかなと思います。
恐らく皆様、ある程度の想像はつくかと思いますが、ご想像通り、基本的にルーデウスは恋愛に関してはド素人……というか、性欲に素直なタイプなので、当然フィリップの奸計に逆らえず、十五歳になる頃には、エリスと結婚することになるかと思います。
シルフィのことを忘れたわけではないでしょうが、そこはフィリップがうまいこと、妾的な立場に彼女を収めるように調整することでしょう。彼自身は妻が一人しかいませんが、ミリス教徒というわけではありませんからね。
シルフィがどう成長しているかはわかりませんが、若くして無詠唱で治癒魔術が使える優秀な魔術師ですから、フィリップ的には積極的に取り込みたい所でしょう。
シルフィ的にはルーデウスの側にいられるし、身近で二人の妻を持つ男を見ているので、違和感は無いでしょう。ルーデウスへの依存は治らないかもしれませんが……。
暴力大好きなエリスと、イジメられっ子なシルフィは、最初こそ相性が悪いでしょうが、ルーデウスが間に立ち、シルフィにエリスとの付き合い方を教えることで、シルフィも徐々にエリスと仲良くなってはいけると思います。
ロキシーは、まぁ、きっとS級冒険者として名を馳せていくことでしょう。
さて、貴族としてフィリップに擁立されたルーデウスは、アスラ王国の首都へと進出していくと思います。
ルーデウス的には貴族の派閥争いなんてどうでもいい所でしょうが、フィリップの奸計に乗せられてエリスと結婚している時点で、ある程度は織り込み済みでしょう。
フィリップ的には、ボレアスの当主の座を狙いたい所なので、ボレアスが付いているのとは別の派閥、第二王子か、あるいはアリエルの派閥への接触を図る所でしょう。
デリックを失くしていないアリエルはやる気が無いため、第二王子側について動いていく事になる……かと思いきや、第二王子の派閥は入り込む余地が無いため、やはりアリエル派となっていくかなと思います。
アリエルにやる気を出させるため、ルーデウスが一芝居うったり、シルフィが奮闘したり、エリスがルークをぶん殴ったりしてるうちに、アリエルもなんとかやる気を出し、王位を目指してくれるでしょう。
その過程で、ルーデウスがピレモンとも交流を深め、もしかするとパウロとノトス・グレイラットの関係も修復できたりするかもしれませんね。
アリエルのバックにフィリップが付いて政治的に動くので、ラノア魔法大学に留学する、なんて事もないでしょう。
フィリップとルーデウスが計画を立て、政争を行い、少しずつアリエルの派閥を広げていく。
ヒトガミも介入してくるかもしれません。助言と称して誘導し、最終的にアリエルが死ぬような形で。ヒトガミ的には誰が王になろうと関係ないでしょうが、オルステッドがアリエルを王にしたい以上、邪魔をしたがるでしょう。
そして、やはりオルステッドは助けてくれるでしょう。彼はアリエルを王にしたいので。
ルーデウスという異物の存在を確認したら、ある程度は様子見をするし、ルーデウスの言葉次第では、やはり心臓に抜き手の一発もぶち込むかもしれませんが……。
ルーデウスが無事に生き残れたら、アリエルは王になり、フィリップはボレアスの当主に返り咲く……かと思いきや、案外その頃には、当主という座にこだわらなくても良くなっていそうなので、宰相あたりになって、落ち着いているかもしれません。
かくして、ルーデウスはアスラの上級貴族にしてアリエルの側近として重宝され、二人の妻を愛しつつ、ゆくゆくはフィリップの後釜として宰相として生きていく。
ハッピーエンド。
なんて感じになっていたのかな……という、IFの話でした。
きっとルーデウスは、どんな人生でも、人の生と死に立ち会ったり、トラウマを克服したりすることで、少しずつ「本気で生きる」ことの本質に近づいていき、後悔や反省を何度も繰り返しながら、生きていくことでしょう。
フィリップは本編では無念の死に方をしましたし、IFの話でも、まぁハッピーエンドにたどり着けず、志半ばにて死ぬかもしれませんが、やりたいことに挑戦し、己の後継を育てて亡くなることを考えれば、きっと後悔は薄いことでしょう。
本編において、ルーデウスはフィリップの遺志は継がず、また別のキャラクターが継ぐことになりますが、それはまた別の話ということで、フィリップへの追悼とさせていただきましょう。
ありがとうございました。
©理不尽な孫の手/KADOKAWA