『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 1』読者アンケート
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『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 1』

理不尽な孫の手先生 こぼれ話

 書籍版からの方ははじめまして。
 WEB版のほうから読んでいただいている方は、いつもありがとうございます。
 理不尽な孫の手です。

 このコーナーは作品のこぼれ話という事だそうです。
 こぼれ話。
 というわけで、無職転生の『誕生秘話』について書いていこうと思います。


・プロトタイプ
 無職転生にはプロトタイプがあります。
 その構想を考えたのは約7年前。
 私がまだ血気盛んなワナビ(ライトノベル作家になりたい人たちの総称)であり、プロになるという事に情熱を燃やしていた時のことです。

 当時の構想メモによると、無職転生の原型は「魔術師の主人公が様々な仲間と冒険や恋をしたりする話」でした。
 よくあるファンタジー系の学園ものですね。
 ただ、当時の私はワナビらしく、周囲に迎合しない気高くも無意味なプライドを持っていました。
 周囲に迎合したくない、似たような作品は書きたくない。
 という思いもあり、この作品が書かれる事はありませんでした。
 このまま行けば、ハードディスクの片隅に埋もれ、パソコンの買い替えと共に記憶の彼方へと消えてしまった事でしょう。

 でも、そんな構想がある日、日の目を見ることになります。

 きっかけは、『小説家になろう』というサイトです。
 そのサイトとめぐり合った時、ワナビとしての私は死んでいました。
 書いても書いても上達せず、応募をしても一次選考すら通らない。
 すでに新作を書いて新人賞に応募する気力は無く、筆を折り、もう小説なんか書かねえぞと決意して、二年ほど経過した頃です。

 当時、私はWEB小説というものを馬鹿にしていました。
 文章を書き始めたばかりの中高生が的ハズレな指摘をしあう、プロのステージからは数段下にあるもの。
 そんな事を思っていたのです。

 そんな私でしたが、小説家になろうというサイトで作品を読み、驚きました。
 文章力の有無にかかわらず、実に楽しそうに小説を書いているのです。
 また「文章力の高い人の書いた作品が、必ずしも高評価を得ているわけではない」という所にも感銘を受けました。

 内容にしても、異世界転生や、異世界トリップといった、言ってみれば一般人から馬鹿にされそうな類のものです。
 しかし私はそういったジャンルが好きでした。
 でも、ワナビ時代にはこんなのは時代遅れだし、売れないから書かない方がいい、と思っていました。
 書くのを恥ずかしいとさえ思っていたように思います。

 そんなジャンルをこのサイトでは書いてもいいのだと思った時、私の中で変遷が起こりました。
 今まで自分の中で、小説を執筆する際にこだわっていた部分を捨てることを決意しました。
『誰も見たことの無いアイデアを重視する』とか、
『パロディは絶対に許さない』とか、
『テンプレは害悪だ』とか、
『安易なエロは滅せよ』とか、
『人気作品の真似をする風潮がウザイ』とか、
 そうしたものを捨てて、新たに物語を書こうと思った時に目に付いた構想が、無職転生のプロトタイプでした。

・無職転生の誕生へ
 小説家になろうの作品に感化された私は、プロトタイプの無職転生(以下、プロト無職)をもとに小説を書き始めました。
でも、
『パロディを多めに盛り込む』
『テンプレもどんどん使っていく』
『エロい展開も多く』
 と、それらのことをプロト無職の構想で使うことは困難でした。

 そこで主人公に一味加えることにしました。
 まず、主人公をエロい事が大好きなオタクの中年男性にする。
 そうする事で、自然にエロ展開にもっていき、さらにパロディも多用することができる。

 彼はオタクであり、あらゆるテンプレを知り尽くしています。
 そんな彼が、「テンプレ展開をテンプレ展開だと理解しつつ解決する」。
 メタ的な観点を作品に盛り込んだわけです。
 ただ、それだけでは、何も面白くありません。
 テンプレを綺麗に解決する、それだけの話になってしまいます。
 そこで、ひと味加えました。

 物語は彼の思い通りに進みます。
 しかし、解決した先には人との出会いがあり、触れあいがあり、彼の思っていたのとは少し違う展開になるのです。
 そうした展開の中で、彼は前世の事を思い出したり、反省したりしながら、変化していく。
 そういった構造を思いつきました。

 おお、これは書いている自分も面白くなりそうだ!

 と、思ってできたのが、無職転生となります。

 あくまで趣味として書こう。
 楽しんで書こう。
 書きたいものを書こう。

 そうして書かれた作品がWEBで人気となり、書籍化まで果たすに至りました。
 私はそのことを、純粋にうれしく思っています。

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