
アンケートにご協力いただきありがとうございました!
『かくして少年は迷宮を駆ける4 竜呑の都市と天陽の獣騎士』
あかのまに先生こぼれ話
◇あとがき
四巻でございます。出せました。嬉しい。
そして購入して読んでいただいた皆様にも心より感謝いたします。
また、ここまで協力していただけた皆様、ありがとうございます。
さて、四巻です。
三巻では物語を加速させるために全力を尽くしましたが、四巻はそこからの続きであり、ある意味三巻以上に扱いが難しいところでもありました。
しかし、四巻まで出すことができたのは皆様の応援あってのものですし、それに応えたいと頑張らせていただきました!
・四巻の内容について
四巻は三巻までの展開と比べると状況がかなり違っています。
出てくるキャラクターの数や事情も大きく異なっており、ゆえに、それを纏めるというのはなかなかの苦労がありました。
しかし結果として、なんとか纏めつつも、展開自体はWEB版よりも更に増やしてボリュームアップさせることに成功したと思っています!
新たな展開、状況に立ち向かうウル達の姿を楽しんでいただければ幸いです。
・四巻のヒロイン、エシェルについて。
そしてエシェルについてです。
四巻の中心人物であり、問題の女……。
彼女なしでは四巻は成り立たず、ぶっちゃけ四巻の全てといっても過言ではありません。
クセ強なヒロイン達の中でも特に、感情という面において喜怒哀楽が激しく、昨今、好まれがちな女性像からはかけ離れた少女です。それゆえに、誰からも好かれるのは難しいかもしれません。
が、作者としては彼女の姿が書籍でも見たくてここまで頑張ってきた所もあるくらい、思い入れ深いキャラでもあります。
なので、どうか! 彼女が泣いて怒って笑って喜ぶ様を楽しんでいただければ嬉しいです!
ではでは、よろしくおねがいしますー!
今回もささやかながら、SSを用意させていただきました。
本編と共にお楽しみいただけますと幸いです。
◇こぼれ話特別SS『七天の勇者のパジャマファッションショー(実演者:アカネ)』
それは夜間、ウルが密かにディズと会っていたときのこと。
「しかし、アレだな」
「アレ?」
一通りの情報交換と助言を受け取った後、改めてディズの状態を見たウルは言った。
「花まみれだな」
「花まみれだねえ」
《モフモフよ》
ディズの馬車の中は、彼女の従者であるジェナが用意した白蝶花でいっぱいに囲まれている。
治療のためという事らしいのだが、白い花の海のようになった馬車の中で寝転がる金色の少女の姿は少々現実離れしていた。
「正直、寝づらくねえの?」
少しクラクラしそうになるのを振り払うようにウルが茶化すと、ディズは微笑んだ。
「寝心地が言いようにベッドと花の位置を調整されてるから平気さ」
「その気遣いが最早怖いな……」
《ジェナったら、ちょっとへんになるから》
「あんま影響受けるなよ。アカネ」
あの従者が少々、やや、けっこう、かなり変な女だということは、ウルも理解した。
そして、アカネにはできる限り影響を受けて欲しくないとウルは切実に願った。
「んで、寝間着も凄いな。うっすら光って見えるが」
「うん、ゆっくりだけど治癒効果がある特別製」
ひらりと彼女が裾をつまむネグリジェは、よくみるとぼんやりと輝いて見える。それが余計に現実感を喪失させているようだった……というよりも――
《ちょっとエッチね?》
「アカネ」
少々はしたない指摘をする妹を窘めると、ディズは楽しげに笑う。
「まあ、寝間着ならいろいろ用意してもらったよ。見る?」
「野郎に寝間着を披露するのはやめろ」
「そこまでいかがわしいものはないよ……うん、コレとか」
そう言って彼女がベッドの下からごそごそと取り出したのは、彼女の言うとおりシンプルな寝間着だった。男女兼用のズボンタイプの寝間着だ。そして服の柄は、
「あー。星の模様か」
夜の空に輝く、星々の模様だった。
「夜間休まれる太陽神の代行、精霊達の御姿だよ。弱き我らも見守りくださいってね。子供たち向けに親が買い与える寝間着としても人気だね」
「へー」
《いいなー》
「他人事だね。って、まあそれはそうか。ごめんね」
「別に気にすることじゃねーよ」
【名無し】である以上、寝間着なんて物とはあまり縁がない。
都市国の外で野営している最中に魔物が襲ってきたなら、すぐさまその場から逃げなければならないからだ。
寝間着、というのはある意味、身を守る手段がちゃんと用意されている都市国でしか使えないのだ。
「そんで、アカネはそもそも着衣の概念が無いしな」
《きがえれるわよ?》
そもそもヒトから遠く離れた姿になってしまった妹をチラリと見ると、彼女は不服そうに胸を反らし、くるりとその場で身体を回転させた。
すると次の瞬間、ディズが見せた星柄の寝間着を身に纏った妖精姿のアカネが姿を現す。華麗なる変身に、ウルとディズはパチパチと拍手を送った。
「おっと可愛い」
「可愛いね」
《ふふーん》
二人の賞賛にアカネはご満悦の様子だった。
「で、次はこれかな?」
再びディズはごそごそとベッドの下を探し始める。そうして取り出された代物(しろもの)を前に、ウルは不審そうに眉を顰めた。
「……なんだそれ?」
「獣人なりきり寝間着、だったかな。実際の獣人はここまでモコモコじゃないけど」
「寝間着ってか……きぐるみ?」
《ちょうかわいー》
祝い事などのお祭りの時に、こうした動物を形作った服で全身を覆い隠す姿を披露している者達は見たことがあるが、それと少し似ている。
顔は出ているが、上下から頭まですっぽりと覆い隠すような寝間着だった。
頭にはわざわざ獣人の耳のようなものまでついている。
「寝間着っつーには珍妙だな……」
「実は着心地良いんだよ? 内側に術式が刻まれていて体温調整もできる」
「へー、割と良いな」
やや色物な見た目だが、夏場を過ぎた後は案外着心地良い代物かもしれない。そう思っていると再びアカネがくるりと一転した。
《へーんしん!》
「おー可愛い」
「可愛いね」
《ふふふふーん》
もこもこになったアカネは再びご満悦になった
「ちなみにこのモコモコ寝間着が、ジェナが一番気に入ってるやつだね」
「よし、封印しとけ。奥底に」
「え、どうして?」
ウルは顔を引きつらせながらそう言うと、ディズは首を傾げる。
「そのモコモコをあの女がそれを気に入ってるのは、なんかちょっと怖いんだよ――」
「愛らしいですよね?」
「オワー!?」
次の瞬間、いつの間にか馬車の中に現れたジェナに、ウルは絹を裂いたような悲鳴をあげた。
「失礼しました。どうぞ続きを。外で護衛を続けておきますので」
ジェナは言うだけ言うと、すっとそのまま馬車から出ていった。
「せめて気配あれよ……」
「諜報とかでも優秀だよ」
《どこでもしんにゅうしほうだいよ?》
「妙に犯罪めいてるな、いちいち……」
とりあえず、彼女のことは深く考えないようにしようとウルは決めた。
「さてあとは……これかな?」
再びディズは寝間着を漁りはじめる。
果たしてこのベッドの下はどうなっているんだ――と、だんだんウルも気になり始めたが、女性の寝室のベッド下事情を訊ねるのはさすがにどうかと思い、疑問を口に出さぬよう努めた。
そうして彼女がとりだしたのは、
「とある都市国で好まれてる寝間着だね。ユカタっていったかな」
「……なんじゃこりゃ、どう着るんだ?」
《ぬのよ? これ》
淡い色をした寝間着だった。のだが、ぱっと見、ウルにもアカネにもそれがどういう寝間着なのか理解できなかった。
袖のようなものは確かにある。だが、そうなると寝間着というよりも羽織るガウンのようにしか見えなかった。しかしそれにしては妙に胴が長い。
兄妹揃って首を傾げると、ディズは頷く。そして――
「実践しようか? よいしょ」
「おいこらまてまてまてまてまてまて」
《えっちね?》
――今着ているネグリジェを脱ぎだそうとするディズを慌てて止めるハメになるウルだった。
©あかのまに/KADOKAWA