叔母から受け継いだ町屋に一人暮らす祥子。まったく使わない奥座敷の襖が、何度閉めても───開いている。(「奥庭より」)
古色蒼然とした武家屋敷。同居する母親は言った。「屋根裏に誰かいるのよ」(「屋根裏に」)
ある雨の日、鈴の音とともに袋小路に佇んでいたのは、黒い和服の女。─── あれも、いないひと?(「雨の鈴」)
田舎町の古い家に引っ越した真菜香は、見知らぬ老人が家の中のそこここにいるのを見掛けるようになった。(「異形のひと」)
ほか、「潮満ちの井戸」「檻の外」。人気絶頂の著者が、最も思い入れあるテーマに存分に腕をふるった、極上のエンターテインメント小説が誕生しました。
営繕かるかや怪異譚
小野 不由美
角川文庫 好評発売中
定価:本体600円+税
シリーズ最新刊はこちら
作中の雨が文字を濡らし、恐怖が文字を震わせる。
これも一つの怪異かもしれない。
道尾秀介
古い日本家屋、袋小路、水路、河童の手……心ときめくものばかりの物語で、読後すでに絵のイメージは出来上がっていました。
恐ろしいものがそこここに潜んでいる、でも美しさも共存している古い家の奥へ奥へ、おそるおそる(少しワクワク)襖を開けて入ってゆくような。読みながら得たそんな感覚を絵に出来たら、と思いました。
そして、そんな家々の「障り」を、淡々と「繕う」事で治療してゆく尾端さん。素敵です。ただ、外見の描写がほぼ無かったので、描くのにはちょっと悩みました。読み手の方々のイメージの邪魔にならなければ幸いです。
漆原友紀
怖い……。早く、早く来てくれ、かるかや!
そう念じながら読み進めていくこのワクワク感!
これは是非、「ホラーは苦手だ」「怖いのはちょっと……」という人に読んでもらいたいです。
中村義洋(映画監督)
チリンと澄んだ鈴の音と雨音が重なる光景は
怖さと美しさが重なる光景でした。
中条あやみ(モデル・女優)
日本的怪談の本質に肉迫する幽暗精緻な連作集。
東雅夫(文芸評論家)
絆を大切にするというのは、実はこういうことなのだ。読後に、目が覚めたような気分でそう思う。 この作者にしかできない希(まれ)な技を目の当たりにした喜びを噛(か)みしめながら。
宮部みゆき(作家)
[讀賣新聞 2015年1月4日付け書評より]