概要
『少年陰陽師 現代編』 書き下ろしショート・ストーリー/第16回角川ビーンズ小説大賞『剣影に誓う未熟な革命 令嬢だって騎士になりたい!』『ローランシアの秘宝を継ぎし者 往け、世界はこの手の中に』
- 3 -受け身を取っているから傷やあざになることは──まあ、そこそこそれなりに結構ある。しかし、取り返しのつかない大怪我をすることはほぼない。神将たちはその辺りをちゃんと心得てくれている。一応。たまにやばいことはあるが生きているからいいのだ。「ううう。勾陣を倒せるようになるにはどうしたらいいんだ」昌浩が修行をはじめたのは三歳の頃だ。その頃はまだ長兄の成親や次兄の昌親もいて、毎朝一緒に神将たちに吹っ飛ばさなりちかまさちかれていた。神将たちが教えてくれる技は実戦向けだ。安倍家の者が代々彼らに学ぶのは、安倍氏の陰陽師たちが相手にしているのが人外のものだからだ。人外のものに憑依さおんみようじひよういれた人間もその中に含まれる。神将たちは加減をしてくれるものの、とにかく容赦がない。人外を相手にする場合、負けはそれすなわち重体か死亡か肉体の欠損かこの世からの消滅なので、安倍家の者たちを死なせないために彼らも必死なのである。「倒すのはかなり難しいぞ。そいつは十二神将の二番手だ」昌浩に答えたのは安倍家の料理番十二神将騰蛇だった。ちなみに彼が十二神将最強なのだが、昌浩がその実力を目の当たとうだりにしたことはない。本気でなくても恐ろしく強いので、全力を発揮する機会がないのである。