ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 7 -あははと笑うと、理美はふと、自分が美味宮を退いた後、新たに美味宮となった少年のことを思い出す。彼は祥飛よりも、しりぞもう二つ、三つ幼かった。鋭い色香が漂う祥飛とは違う、可愛らしい女の子のような容姿だった。和国を離れて一年以上がかわい経った今、あの可愛らしい少年も少しは大人らしくなったのだろうかと思う。なにしろ祥飛にしても、理美と出会った頃とは随分雰囲気が変わったし、背も伸びたようだ。ずいぶんふんいきまじまじ見つめていたので、祥飛が嫌な顔をする。いや「なんだ。余の顔に何かついているのか」「え、いいえ。ちょっと思い出したんです。わたしの代わりに美味宮になった真佐智という男の子のことを」「男?懐かしむほどいい男なのか」祥飛が、むっとして問う。理美は、うーんと考え込む。「真佐智は、姫さん呼ばわりされてましたからね~。いい男というよりは可愛い子でした。いい男といえば真佐智よりも、炊部かしべを勤めていた奈津ですかねぇ。それに斎宮様のお側に仕えている小宮司の冬嗣も、大人らしくて頼もしかったですが」つかしようぐうじふゆつぐ崑国の乾いた風とは違う、しっとりとした和国の風を思い出し懐かしくなる。和国から輿入れした美味宮理子改め雪理美こしいあやこせつという人間は、記録上は行方知れずになってしまっている。和国との縁が切れたとはいえ、その懐かしさは消えない。向こゆくえうからこちらの姿は見えなくなっても、こちらからは懐かしい故国が時に透けて見える。和国からの使節を見かけるときや、