ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 5 -はっと、理美はふり返った。りみ「あれ?」今、確かに、誰かに呼ばれたような気がしたのだ。しかし背後にあるのは、四阿の欄干越しに見える翡翠泉の水面の輝きあずまやらんかんひすいせんだけ。(なんだろう?)誰に呼ばれたのか、なぜ呼ばれたのかわからない。けれど胸の中が不意に、いやに懐かしい感じで満たされた。「どうした」澄んだ色の汁物に口をつけた崑国五代皇帝龍祥飛が、不審げに問いかけてきた。りゆうしようひ「いいえ。何でもありません」祥飛のために昼餉を給仕していた理美は手を止め、笑顔で答えた。祥飛は汁物の碗を見つめながら訊いた。ひるげき「おまえの故国、和国とは、どんな場所なのだ」皇后候補として水祇宮に仮住まいしている理美は、珠ちゃん──国を守護する五龍を、祥飛と対面させるために宮城へ行すいしきゆうたまごりゆうくのが日課だ。しかし時には祥飛の方が、気晴らしをかねて水祇宮にやって来る。そういうときは「陛下が明日おみえになへいかる」と前日に知らせがあるのだが、今日は突然の訪問だった。