ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 4 -ただ十年というのは、若い真佐智にはとてつもなく長い年月だ。少年の自分が大人になり、美味宮として落ち着いた心で日々を過ごす姿など、想像できない。けれど先代美味宮は、今はいない。色々な心残りも心配もあっただろうが、彼女は運命に従い遠い国へと嫁いだのだ。真佐智は先代の心残りや心配を受けとめ、海の向こうにいる彼女に、心配はいりませんと、笑って言えるようにならなければいけない。(大変だな)正直そう思う。けれど自分で選んだ道なのだから日々、勤めていくしかない。(先代。今のわたしでは頼りないかもしれません。十年待ってください。そうすれば、少しはましな美味宮になれるかもしれません)深く鮮やかな夏空に目を向けて、真佐智ははるか遠くへ問う。(今、お幸せですか?先代)†