ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 3 -そよぐ穂に目を向けて、奈津は淡々と答えた。たんたん「崑国の主食は麦だと聞くから、稲田よりも麦畑の方が多いかもな。皇帝は、若い皇帝という以外は和国に伝わってこない。先代が幸せかどうかは、想像するしかないだろう」「先代は、ぼやっとした方だったけど。大丈夫かな?」心配に眉をひそめた真佐智の横顔を見て、奈津が静かに問う。「先代は、ぼやっとしていただけの人だと思うのか?」「え、それは」先代美味宮は、会えばいつもほわっと笑っているし、何事が起こっても呑気に構えているような人だった。しかし───のんき確かに奈津が言うとおりかもしれない。(よく考えたら先代は、色々とすごく思い切ったことをしてたかも?)「先代は、おまえの十倍は逞しい。おまえと一緒にするな、姫さん」たくま「姫さんじゃない」むっとして言い返したが、確かにそうかもしれない。(先代が美味宮を勤めたのは十年。十年かければ、わたしは先代と同じくらいになれるのか?)つと