ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 21 -サルヴァトーレがガラスを張る道具を狙っていたのなら、それを目の前で使って見せるべきでもなかった。青年が、気持ちを切り替えるように一つ息をつき、少女を見る。「......助かった」どういたしまして、と言うつもりが、膝から崩れ落ちた。手が震えている。思っていたよりもずっと、気を張っていたらしい。眉をひそめた青年が、手を差し伸べてきた。その手をとって立ち上がる。「助かりはしたが、今後余計な手出しは慎むように」助け起こしてくれた手とは対照的な、厳しい口調だった。「名前は?」そういえば、この青年にも、眼鏡の男性にもまだ挨拶をしていなかったことに気づく。すると眼鏡の男性がにっこりと笑って、口をはさんできた。この人が、もしかしなくてもこの城の主、魔法卿なのだろう。まほうきよう「人に名前を聞くときは、自分から名乗ろう、女性相手なら特に」青年は慇懃に頷いてから、不機嫌そうな声で名乗った。「ジョン・アップルガース。この城の執事」バトラー