ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 18 -「外れたぜ、お嬢ちゃん」侵入者が薄く笑う。いいや、狙い通りだ。一瞬の静寂ののち、パン!という音と共に廊下にガラスの壁が出来上がる。退路が完全に塞がれたことを悟った侵入者の心の揺らぎは隙となり、青年が剣をはね上げた。細い刀身が、侵入者の首筋に突き付けられる。あの球体が、眼鏡をかけた男性の言った通りのものでよかった。そんな魔法のようなものがあるわけがないと一瞬疑ったが、この城ならば、魔法のようなものは、あって当然だった。本当に膜の様にガラスの壁を張ってくれた。これなら物理的に退路を塞げる上、奥側の壁のどこかに当たりさえすればいい。侵入者という小さな的よりずっと、狙いやすかった。「降伏しろ」追い詰められた侵入者は、青年の言葉には答えず、俯いて肩を震わせていた。「街の牢で、誰の依頼か、何が狙いか、洗いざらい吐いてもらうことになる」青年は油断無く剣を突き付けたままそう告げた。侵入者の肩の震えが大きくなる。喉がくつくつと鳴った。侵入者は、追