ブックタイトル『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

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『双花斎宮料理帖』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】第16回角川ビーンズ大賞《優秀賞》&《読者賞》受賞作『魔法卿城の優しい嘘銀の執事と緋の名前』

- 12 -「序章魔法卿城の執事」ガッシャ──ン!!爆ぜるような、ガラスの割れる音。それを聞いた瞬間に、少女は走り出していた。今日初めて来た城だ。構造など知らない。ガラスが割れた場所で何が起こっているのかも。それでも、音は上からだったという体感だけを頼りに、暗い石造りの階段を駆け上がる。まだ夜の空気は痛いほど冷たい。その温度が、逸る気持ちを引き締めた。スカートの裾が冷たい空気をはらんで靡く。一歩上がるたびに、年の割に控えめな胸の上で、母の形見のペンダントが揺れた。息を切らして最上階へと駆け上がると、そこはいくつものドアが左右に並んだ、長い廊下だった。広くはないが奥行きの深い視界、そこでは二人の男が剣を持ち対峙していた。「戦況は!?」どちらが敵かもわからないのに、そう口に出していた。