ブックタイトル『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』
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『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』
- 13 -名前は後から知ったけど、あの時にちゃんと聞かなかったから、学校ですれ違っても名前を呼びかけることもできない。キミのことを目で追って、そんなことをしているのは私だけじゃないことに気づくと、また怖じ気づく。せめてクラスが一緒になれば、せめてバスでたまたま隣り合わせになれば、話すきっかけが?めるかもなんて、淡い期待は肩透かしのまま、無慈悲に時が過ぎていく。まともに話すことなどないままに、とうとう3年生の夏が終わり、部活を引退したキミはバスを待つ45分間を図書館で勉強するようになった。私はいつも六人がけのテーブルの通路側の端。キミはいつも斜め向かいの窓側の端。私が勇気を出して近寄れた距離。まだまだ遠くて話すこともできないけど。キミを密かに盗み見ると、近くてドキドキする。キミの隣、その隣、そして通路をまわってやっと私。意気地なしの私が勇気を最大限ふりしぼって近づけたのは、キミの睫毛がやっと見えるこの席までだった。