ブックタイトル『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』

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『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』

- 12 -人いきれ、誰かの甘い香水のにおい。息が詰まりそうだった。それに加え、お尻になにかがぶつかっていて、痴漢かどうかもわからず、動くこともできず、ひたすらに時間が過ぎるのを待っていた。「向井、向井理緒」私は目の前の一人席に座る、同じ学校の制服に身を包んだ男子に名前を呼ばれて驚いた。「ここ座んな」私が驚いていることなど気にもせず淡々とそう言うと、さっと立ち上がって私を自分が座っていた席に座らせる。「あの......ありがとうございます。名前......」と言うと、その男子は私のスクールバッグにつけてあるパスケースを長い指でさして言う。「そこに書いてあった」素っ気ないほど短い返事。私は聞けなかった。そうじゃなくて、キミの名前を聞きたかったのに。そんな、キミとの出会いから既に2年がたっている。私は意気地なし。