ブックタイトル『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』
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『告白予行練習 僕が名前を呼ぶ日』書き下ろしショート・ストーリー/【試し読み】『5分後にキミのひと言ではじまる恋』
- 11 -「聞かれたかな」友人の言葉はさらに私に刺さる。「悪口ちくるような奴じゃないか」あっけらかんと言う友人に、私は泣きたくなった。悪口......。思ってもいない悪口をキミに聞かれたかもしれない。しかも彼女、いるんですか......。私は憶測に過ぎない情報にすっかり気持ちが負けて、口をつぐんだ。私はその日、運が悪かった。雨が降っていてやたら混んでいたバス。いつもなら同じバス停から乗る女友達からは、親に車で送ってもらうと連絡がきた。乗りこんだバスは身動きが取れないほど混み合っていて、高い湿度に窓が曇っていた。私はバスの中ほどで、圧されるようにしながらバスの揺れに耐えるしかなかった。